SSブログ

『被曝治療83日間の記録』 『神戸新聞の100日』 [本]

どちらももう古い単行本(ハードカバー)で、絶版になっているのかも知れません。

何度も読んだ本なのですが、今回もまた、両方とも読み返しました。
特に神戸新聞の本は、私も実際に体験したことでもあって、読み返す度に苦しくなり、涙が溢れます。

『被曝治療83日間の記録 東海村臨界事故 NHK取材班』
岩波書店 2002年10月29日 第一版発行

IMG_0004.jpg
これは、1999年9月30日、東海村にある核燃料加工施設「JCO」 で発生した「臨界事故」により、放射線の中では最もエネルギーの大きい「中性子線」が、作業員の身体を突き抜け、その後の懸命の治療を追ったNHKのドキュメンタリーを本に書き起こされた一冊です。
 
 
中性子線の被曝は、想像を絶する障害を人体におよぼします。
 
皮膚表面はもちろん、造血機能・造血幹細胞が死滅。
その為にあらゆる粘膜がやられる・・・
染色体がバラバラに破壊される・・・ なので、粘膜を始め、新しい細胞が造られなくなる・・・
白血球が破壊され、リンパ球がほとんど無くなってしまう・・・
新しい細胞ができなくなるので、皮膚が死滅し、皮下組織がむき出しになる・・・
 
壮絶な戦いの記録です。
 
この事故は、通常のマニュアルとは別に、「裏マニュアル」が常用され、効率だけを最優先し、危険性に対する意識が薄れていた事による事故。
 
東大病院の主治医は、
「原子力防災の施策の中で、人命軽視がはなはだしい。 現場の人間として、いらだちを感じている。 責任ある立場の方々の猛省を促したい」
と、コメントされている。
 
事故など起こるはずがない・・・
原子力安全神話という虚構のなかで、医療対策はかえりみられることなく、臨界事故が起きた。

国の法律にも、防災基本計画にも、医者の視点、すなわち「命の視点」が決定的に欠けていた。
(以上、本誌より抜粋)
 
今回の福島原発にも、同じようなことが言えるのではないでしょうか・・・
 
高濃度の汚染水により被曝した作業員の方も、同じ場所で前日にはそれほど高い放射線は測定されていなかった。
なので、原発担当員の同行なしに、くるぶしまでの靴を履いてタービン建屋に入った。
ここに、大きなミスがあったのではないか・・・
 
事故が起こるときには殆ど、こんなちょっとした油断、「大丈夫だろう・・・」という勝手な判断に起因するところが大きいと思うのです。
 
そういう意味では、この10年前のJCOの教訓は、十分反映されていなかった・・・
 
そしてもう一冊・・・

 

そしてもう一冊、これまた古い単行本で、やっぱり入手できないかも知れません。

『神戸新聞の100日 阪神大震災 地域ジャーナリズムの戦い』
神戸新聞社 著 プレジデント社 1995年11月30日 第一版発行

神戸新聞の100日
これは、阪神淡路大震災直後、地域新聞を発行し続けた壮絶なドキュメンタリーです。
「新聞が発行できない ということは、新聞社の終焉を意味する。
生きるために、新聞社の細胞であり、器官であり、手足であるすべての社員が本能的に動いた」
 
神戸新聞社も壊滅的な被害を受け、電源もダウン
京都新聞の協力を得て、地元新聞を発行し続ける という、壮絶なドキュメンタリーです。
 
何度も読み返していますが、その度に目頭が熱くなります・・・
 
このような甚大な災害が起こる度に、様々な視点で検証されているはずです。
今回は、想定外の地震・津波の被害が広範囲に襲ってきた。
 
想定外・・・
想定できなかったのでしょうか・・・

 


nice!(8)  コメント(9)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 8

コメント 9

のろ

福島の放射能被爆・・・。数日前に隣だかの施設で高濃度の放射能が検出されていたにもかかわらず、情報が他の施設の方へ共有されてなかったとのこと。こんなところにも縦割り意識が残っていて、緊急事態だという意識が希薄なのでしょう。リスク管理が甘いと言うことですね。あそこの会社の企業体質はいったいどうなってるんだ?と思わずにはいられません。
by のろ (2011-03-27 10:13) 

mistta

今日は。「歴史は繰り返す」と言います。繰り返されたときには
以前の教訓からそれなりの対応を出来るようにしたいものですが・・・。
by mistta (2011-03-27 11:13) 

大将

阪神淡路大震災の時も
そして今回の東日本大震災でも!!
両災害の数日前の新聞に
大型地震の恐れ!と言う記事
ある大学の教授による記事だそうですが
それを二度!も軽視している事に問題があるし
原発も再三安全だからと言う触れ込みで無理押しして作った
便利と言う理由だけで人命に危害のあるものに
想定外や万が一はけしてあってはならないと思います
そして報道の問題も!
1番怖いのは地震にしても被爆にしても
無知な事が1番恐ろしい事だと思います
by 大将 (2011-03-27 18:45) 

hidechan

のろさん、ありがとうございます。
だいぶ、お疲れではないでしょうか・・・

今回の作業で直接被曝をされた方々は、新聞には「東電の関連会社」と記載がありましたが、「東電の下請け会社」なのではないのでしょうか・・・(私の勝手な想像です)
東電の現地スタッフも生命の危険と隣り合わせでの作業が続いていると思いますが、更に危険な作業・・・ 嫌な考え方かも知れませんが、危険な作業は、更に下請けの会社に任せる っていう・・・ あまり勝手な想像での記載は良くないですね。

いずれにしても、のろさんにもコメントいただいたとおり、現場での刻一刻推移しているデータや情報の共有が、やはりできていないように思われます。

リスク管理・危機管理が甘い ということになりますね。

どうも夕方のニュースを聞く限り、更に悪化、最悪の事態に近づきつつある・・・

もうすでに、東電や現地スタッフ(消防・自衛隊・警察等々)れべるが対応する段階は超越し、もっと早い段階で国が介入し、主導権を持って対応する事態です。

何故いまだに、それができないのか・・・

by hidechan (2011-03-27 20:57) 

hidechan

misttaさん、ありがとうございます。

事態はかなり深刻で甚大な状況になってきているようです。
放射線カウンタのメーターが振り切れて、正確な線量は現段階では計測不可能 になっているようです。

さらに、周辺の土壌のプルトニウム汚染調査を開始した と。
プルトニウムの環境調査はかなり難しいらしく、しかし、プルトニウムが検出された ということは、原子炉内から漏れだしていることが確実になり、最悪なことは、プルトニウムの半減期はなんと「2万年!!!!」

ということは、一度検出されてしまえば、2万年以上かかっても、放射線量が半減しない・・・
どうも、福島原発のシナリオは、最悪の事態に向かってしまっているようです。
by hidechan (2011-03-27 21:15) 

hidechan

大将さん、ありがとうございます。

残念ながら、教訓が十分に生かされていない。
大将さんにもコメントいただいたように、福島原発でも、2年前にある教授から安全対策が甘い との指摘を受けていたそうですね。
しかし福島原発は、「この周辺で過去の歴史的な地震・津波災害があったことは承知しているが、100年に一度あるかどうか というごく希な大震災であって、そこまでの安全対策を盛り込むことは現実的ではない」(確かこんな内容だったと思います) と、結果的に取り入れることはしなかった。

それがこの災害を引き起こしたんですね。

記事にも書かせていただいたのですが、「想定外」って、あちこちで平気で使っていて、私たちも今までは無意識に聞いていましたが、「想定外」って、技術者特有の「逃げ口上」ですね。

想定外 ではなく、一応は想定していたけど、それが甘かった っていうことですよね。
それは結局、「想定していなかった」ということ。

素人ながら、原発の状況が、かなり深刻になってきているような気がします。
by hidechan (2011-03-27 21:25) 

hidechan

たかれろさん、ありがとうございます。
その後の復興状況はいかがですか?
by hidechan (2011-03-27 21:26) 

hidechan

dendenmushiさん、ご訪問&niceありがとうございます。
by hidechan (2011-03-27 21:29) 

hidechan

zankiさん、ご訪問&niceありがとうございます。
by hidechan (2011-03-27 21:31) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。