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【入札】って・・・何?(医療業界の場合) [お仕事]

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昨日は免許更新で、午後から運転免許試験場へ行った。

試験場はうちから歩いていける距離なので、暑い中 久し振りに歩いた。
試験場と道を挟んだ向かいには、神奈川県立がんセンターがある。
 
この病院は、私が大阪から横浜に異動してきたときにはすでに稼働して数年経っていたので、少なくとも20年は経っている。
老朽化も進んでいる。
 
で、横浜市や区の広報では、この県立がんセンター新築事業が動いていることは知っていた。
場所も広報を読んである程度は知っていたが、現病院を稼働しながら新築・・・そんなに広い場所があったかなぁ・・・と思っていたが、 なんと、試験場のコースの一部(?)に、新病院が建設されている。

→ 神奈川県立がんセンター新病院パンフレット
 
現場を初めて見たが、なかなかの巨大プロジェクトだ。
しかも、今新築中の新病院には、重粒子線治療センター (i-ROCK アイロック) も新設される。
 
この巨大プロジェクトに向けては、数年前から(少なくとも5年以上・・・?)、ゼネコンや医療業界諸々の激しい争奪戦が展開されていたんだろうなぁ・・・ と、傍観している自分が ちょっと寂しい・・・(笑)

公立病院、しかもこれだけの規模のプロジェクト 
どういう段階を踏んで、納入業者が決まり、病院の運営が始まるのか・・・ ご存じですか・・・



(医療業界では・・・)

数年後、新たなプロジェクトをスタートさせたい というとき、まずは院内に 検討委員会(準備委員会) が設置される。
メンバーは、現場の看護師さん、ドクター、技師さん、事務方・・・
オブザーバーとして、ごくまれにメーカーが加わることもある。

これらメンバーが、現病院のスタッフだけなのか、近隣の基幹病院(大学医学部や、連携医療機関等)のスタッフも招聘するのか が、まずポイント。

外部スタッフを招聘する場合、「系列病院」であることが多いが、逆にそれを嫌うこともある。
また、他県から招聘する場合も多い。
なので、医療関連メーカーは、周辺地域とも緊密な連携を常にとる必要がある。

検討委員会が立ち上がると、病院内外で様々な情報を収集し、どんなことをやりたいのか その為にはどんなものが必要なのか 院内連携・近隣施設連携はどうするのか・・・等の「構想図」を描き、事務方に上げる。

事務方は、現場で作成された 生の声 を反映した「構想図」に基づき、調達(仕入れ)や、運営・メンテナンスに どのくらいの費用がかかるのか の試算に入る。
メーカー数社に内密で 「こんな事をした場合に、御社ではどれくらい費用がかかるか 」 の試算見積もり 提出要求がくる場合もある。

この段階では、まだ「構想図仕様」は公開されていない。

普段からきちっと 検討委員会 メンバーのフォローができていれば、今 こんな事をやろうとしている・・・ という情報は事前にキャッチできているから、十分に利益を取れる 相応の試算見積もり を立てることができる。

事務方は、各社から集めた見積もり、及び市場動向、他県の調達情報 等を考慮し、「落札予定価格」 を算定する。

一般公開入札 の場合、入札実施日に 応札(入札に参加すること)した各メーカーが、入札金額を記入した用紙を入札箱に投函するが、各応札メーカーのうち 最低入札価格がこの落札予定価格 に達しない場合は、再入札 となり、予定価格以下の応札額が入れられるまで繰り返される。

通常、入札用紙の金額記入欄に 「数字以外の文字」を記入すると、その用紙は無効となり、その時点で札を入れたメーカーは失格・退場となる。
各メーカーがもくろんだ入札金額で落ちない(落札できない)場合、このルールに基づき、金額欄に 「以下 弊社辞退します」 等の文言を記入し、以降の入札を辞退する。 金額欄を空欄で出すことは 普通はしない(聞いたことがない)。

落札予定価格 に達せず、尚かつ 応札メーカーすべてが辞退する場合もある。
この場合は、後日 改めて入札を実施するか、入札額が低いメーカーと「相談」となるか どちらかになる。

勿論、この「落札予定価格」は公開されない。
が、「落札予定価格」を 事前に正確に察知すること も、営業の腕の見せ所。


入札実施準備と並行して、「入札仕様書」が作成される。

これは、
こんな事をいつ頃から始める。 それぞれの機能は、以下のものを含むこと・・・ 」
と、事細かなスペックやシステム仕様が明記され、応札するためには、最低限 この「入札仕様書」に書かれた内容は満たさなければならない。
現場が要求する内容であるので、基本的には 「要求仕様」 として現場スタッフがまとめ、事務方に上げる。

なので、この 「要求仕様」 策定段階で、いかに 「自社特有の機能(他社にはない機能)」を、「入札仕様」として組み込んでもらえるか が、これまた営業の腕の見せ所であり、入札を 無駄に価格競争に持ち込まないための最大の対策でもある。

自社特有の機能 を、入札仕様 として盛り込んでもらえれば、うまくいけば競合他社が応札できなくなる。
応札できたとしても、他社は特注扱い となるので、自ずとコストが上がってしまう。

その為には、その病院の運用方法を、きちっと把握しておくことも大切。
検査の流れ、書類の流れ、人の動き、システムの柔軟性・・・ これらをきちっと把握し、適切な提案ができるか によって、「入札仕様」として盛り込まれるかどうか が決まる。

事務方の「落札予定価格」が決まり、「入札仕様書」が作成されれば、国の施設の場合は 官報に、自治体の場合はそれぞれの物品調達情報 として告示される。

国・及び自治体への入札の場合、大前提として 入札参加資格審査 を通り、登録されている必要がある。
以前は、各省庁ごと、自治体ごとにその都度申請し審査を受けなければならなかったが、今は統一審査を通れば、基本的に各省庁・自治体への応札は可能。

こうして、指定日に入札を行い、通常は、落札額はその場では読み上げられず(読み上げられる場合もある)、落札業者名が公表され、その後の手続きに入る・・・

・・・と、まあ、こんな感じですね・・・

実際に 商談(の情報)を入手してから、入札、落札するまでに、早くて数年・・・もっとかかるときも多々あります。
地道な営業活動の成果だと思います。
ナショナルセンター、独立行政法人、公立病院、私立大学医学部・・・ 私はずっと、この市場を担当させていただきましたが、日々の営業活動は、とても地味な事が多いです。

オペの立ち合い、救命センターの機器チェック、動物実験のお手伝い、データ整理、病棟廻り・・・

ただ、医局廻りの大切なところは、ドクターが関連病院に異動する あるいは開業する・・・
このドクター派閥と、こっちの派閥は・・・一体どうなのよ・・・
教授選挙が近づいてきたら・・・ これまた大変・・・
他大学から医局長が異動してきたら、今までの医局長はどうなっちゃうの・・・
関連病院へ出向していたドクターが戻ってくる・・・ 勢力図はどうなるの・・・

・・・と、関連病院の担当者とは、常に連絡を密に取っておく必要があります・・・


今まで何度も入札に参加しましたが、色々ドラマも見てきました・・・

  • 大昔、数千万円のシステム入札で、元々その病院が牙城(最も強いメーカー)だったメーカーが、「10円」で落札したが、あまりにも常識外(非常識)の入札金額であったため、それ以降出入り禁止になった・・・とか
  • 消費税導入後 間もない頃、仕様書には「・・・記入金額に3/100を乗じた額を加えた金額で契約する・・・」(税抜きで入札してね ということ)と書かれているにもかかわらず税込みで入札したり・・・
  • 一社だけ予定価格を大幅に下回る額で落札したが、結局 契約履行できず、年度半ばで消えていったメーカー とか・・・
  • 現場も私たちも、この入札はあのメーカーに決まりだね と思っていたら、いざ導入段階で、現場が思っていたのとは全く違うメーカーが打ち合わせに来だして、現場は怒る 事務方もそのメーカーに怒り、私たちのメーカーに相談に来る・・・とか・・・

以上の大型機器 以外にも、消耗品の「単価契約」という入札(見積もり合わせ)があります。
これは、次年度 院内で使用する消耗備品は、相場単価が変わっても、当初の単価契約で契約した導入業者から継続して購入する という、事務方の手続きを軽減するための入札。
医療機器は、消耗備品も大きな利益を生み出します。
消耗品 とひとくくりに呼びますが、この中には「高額消耗品」も多く(カテーテル等)、この単価契約を取ることもとても大切です。

入札は、営業努力の一区切り で、顔を合わせる営業はいつもの顔なじみ・・・
でも、今の入札は 電子入札 も増え、とても事務的で客観的になった反面、殺伐としている(元々は、これが正しい姿 でしょうが・・・) と思うのは、私だけ・・・でしょうか・・・

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のろ

10円入札・・・。1円入札というのもありませんでしたっけ(^_^;)。
最近ニュースになりませんが、さすがにそれは亡くなってきているのかな~・・・。
入札・・・特に一般入札?の場合、価格競争になってしまい、結果、手抜き工事とか、契約を満了できないとか、いろいろ問題が発生してきている実態もあるようですね。
私のブログにある日のところにちょこっとだけ書かせては頂いてたんですが、現在日本の抱える問題はほとんど全てデフレが原因になっているのに、政治家、官僚、マスコミ、ほとんどが構造改革とか、増税とか、インフレ抑制策にばかり走り、結果、デフレを更に進行させてしまっているという事実を、YouTubeの動画をきっかけに知らされました。
偶然ですが、私がYouTubeにログインしたときに一つの動画が右の列に表示されそれがあまりにもわかりやすく説明されており、これまでマスコミの説明や、政治家の話し等、そんなものなの?それしか無いの?という違和感しか持っておりませんでした。なのにこの動画の説明の明瞭さに、嘘の入りようが無いな・・・という目から鱗が落ちる気がしております。
「三橋貴明」をYouTubeのキーワードに入れて検索して是非見て頂きたいです。何本か見れば、きっと、もの凄い納得感と、現状の絶望感(デフレ時にデフレ対策をするおろか)が分かって頂けると思います。
で、ザクッとその中での処方箋を言うと、政府主導の公共投資から世の中のお金を回すことになります。現金給付などはGDPが上がらないしみんな貯金に回る可能性が高いためNGです。
悪い事のやり玉にされてきた公共投資。でもこれがデフレ時のデフレ対策には正しい。もうほとんどこれしか無いと言えるもののようです。
デフレのきっかけはバブル崩壊なのですが、その後の政治家で正しい方法をとったのは、故小渕首相と麻生首相だけなのですが、小渕さんは道半ばでなくなり、麻生さんはマスコミに殺されたようなものです。
当時は、情報源としてマスコミくらいしかなく、デフレ時のデフレ対策が必要という話は闇に葬られていましたが、現在はインターネットというものがありますのでじわじわとですが、デフレ対策がなにより必要と言うことが広がり始めているとは思われます。
三橋貴明さんのTwitterやブログの参照数はかなりの数になっているようです。
後は、この正しい認識を持った政治家が正しい情報を発信してくれる事を望むばかりではあります。といっても・・・マスコミがまた邪魔をするのかな・・・。
三橋貴明と麻生さんが同席する動画もあります。麻生さん自身が、認識してないとか、情報を発信してないという事は無いのかも知れませんが、やっぱりマスコミが黙殺しているのでしょうね・・・。
そこが非常にじれったいところであります。投票しようにも投票するところがない・・・。そこが絶望感のところでもあります・・・。ふう( -.-) =з。
すみません。入札から勝手に話を膨らませてしまいました。m(._.)m ペコッ。でもhidechanさんにも知って頂きたいお話と思い書かせて頂きました。
三橋貴明のことをご存じなかったのであれば、お忙しいでしょうけれど、是非数本でいいので動画を見て頂きたいです。m(._.)m ペコッ。
by のろ (2012-08-08 19:42) 

hidechan

のろさん、今晩は。
記事では、できるだけドロドロした部分には触れず、客観的に流れだけを書くように注意しました(笑)

実際は、もう ドロドロです・・・! (今はどうか知りません・・・)

病院の 調度課、用度課、資材管理課・・・の担当者を できるだけ惑わせないように・・・って、神経使います。
(もう、時効になっていると思うので・・・)
昔は、競合メーカーや、その病院での代表的な納入業者さんと、事前の打ち合わせを欠かせませんでした・・・ (これを、世間では 談合 と呼ぶようですが・・・汗)
入札の流れも、細かく打ち合わせしていましたよ・・・
(いくら時効でも、あまり書くと・・・まずそう・・・)

いまは、そういうことはできないですね・・・
これが民間病院(私立)なら、そういう打ち合わせをしないと、かえって迷惑をかけてしまうことが多いです・・・

三橋貴明さん のお名前は、のろさんのブログで何度か見ています。
まだ実際に映像を見ていないので・・・ ゆっくり見るようにします。

by hidechan (2012-08-09 00:29) 

hidechan

R8さん、ご訪問&niceありがとうございます。
ご無沙汰してしまっておりました。
また、これまで通り よろしくお願いします。
by hidechan (2012-08-09 14:51) 

mistta

今晩は。入札には面倒で儲からない、嫌な印象しかありません。
by mistta (2012-08-09 19:02) 

hidechan

misttaさん、お疲れさまです。
ご無沙汰してしまっていますが、今後とも今まで同様、よろしくお願いします。

・・・そうですね・・・ 入札は手続きは面倒で、確かに あまりいい手段とは 私も思っていません。

ただ・・・ 少なくとも医療業界は、以前のような 随契(随意契約)は、ほとんどと言っていいほど無くなってしまいました。

毎日 日参して 医療現場や事務方と硬い信頼関係ができていても、大型調達はどうしても透明性を確保するために 公開入札 になるのは避けて通れません・・・

ただ、単なる価格競争 に持ち込まないよう、メーカー営業は それぞれ工夫をしています・・・

by hidechan (2012-08-10 02:18) 

大将

大将も営業の世界しか知りませんが
営業って花形的な仕事ではなく
どんな業種であっても地味に真面目にあきらめず
そして数字に強く
ひと昔前のように人間関係だけで仕事ができるほど甘くは無いですよね
by 大将 (2012-08-10 22:14) 

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