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「事象関連電位」 17年前の自分の仕事に「Good Job!」をあげたい(自画自賛?) [勉強・研究]

(以前にも、何度か私の主治医のドクターのことを書かせていただいたと思います)

ちょっと今回の記事は、長くなりそうです・・・

医療現場でサラリーマンだったとき、私は2回、自分の心と頭が壊れました
(1回目は、かなり強度の「うつ状態」、2回目は、別の医療系企業で、「うつ」ではあったのですが、診断書上は、「自律神経失調症」としていただきました。)

で、その時、2回とも救いを求め、私を地獄のどん底から救い出してくれたのが、今でも心の底から信頼している主治医のドクターなのですが、何分、大学病院を出て副院長となった病院が、私の自宅から遠い・・・ 片道、車で2時間・・・ 朝9時前に病院についても、すでに40番台の待合い札・・・ 
なので、最後に通院したのが、もう、昨年の秋頃でしたでしょうか・・・ 
心の状態はもうお陰様でほとんど大丈夫だと思っているのですが、今でも、処方された2種類の眠剤がないと、いくら眠くても寝られない・・・ という症状だけが残ったままなのです
で、やむなく、自宅の近くのホームドクター(内科)に、その時の処方内容を提示して、お薬を出していただいています。

このドクターは、実は前々職の医療機器メーカー在籍の時、担当した神奈川県内 某医科大学の精神神経科の、その頃新進気鋭の研究熱心な若手ドクターで、奥様も同じ医局。
この大学は、まだまだ攻め切れていなくてそんなときに私が大阪から異動になり、担当することになったのです。

大学内を毎日朝から夜まで営業で各科医局を動き回り、精神神経科のこのドクターとも、お話しができるようになりました。
当時、アルツハイマーの研究をされていて、同時に、事象関連電位(ERP:Event Related Potential)の分野でも、先進的な研究をされていました。
私が関西でお仕事をしていたときは、「循環器」(心臓関係)分野に興味が出てきた頃で、勉強もし、ある程度はドクターの要望に応えられるようになりました。
循環器分野の自社製品は、かなり髄まで使いこなしていました。

でも、脳神経関係は逆に、ほとんど知りませんでした・・・

横浜に異動し、この医科大学付属病院を担当することになって、今度は、ちょっと苦手意識があった脳神経分野を徹底的に勉強し、このドクターにしつこいくらいに教えていただきました。(・・・というのも、この医科大学では、当時在籍していた医療機器メーカーは、循環器分野で苦戦を強いられていました・・・)

(前振りがすでに長いですね・・・)
そんな状態だったので、しばらくこのドクターに診ていただくこともできず、「そろそろ行かなくちゃな・・・」と、自分のからだが要求するようになってきたところだったのです。

・・・と、先月初め、いつものお仕事中に、このドクターの病院から携帯に連絡が・・・


「hidechanさん、まだお仕事してる?」
「先生、ご無沙汰しております。 病院に行かなくちゃ・・・と、ここ最近特に感じているのですが、なかなか時間が取れなくて・・・」
「電話の声は、元気そうだね・・・」
だいぶ前に、何度かお話ししていたことなんだけど、ようやく大学から機材一式を持ってこれるようになったんだよ。 お仕事として依頼したいんだけど・・・
(実は、昔、ドクターの要求を満たすべく、私が組んだ検査解析装置一式が、すでに大学で廃棄処分になって、もし必要なら持っていって良い と大学から言われている。 その時にはお願いするよ と、受診中に何度かお話しは頂いていたのです。)
「先生、大丈夫です。 大体の予定を組んでいただければ、都合付けます。 喜んでお手伝いさせていただきます。」

(ここまでがプロローグ・・・ 長いですね)

 

で、何度かの電話での打ち合わせの結果、おととい(21日 水曜日)11時、大学病院の受付で待ち合わせることになりました。

私も数ヶ月ぶりのドクターとの再会。 
しかも今回は、「患者」と「主治医」の立場ではなく、お仕事の立場・・・ 
緊張感と楽しみ感で、だいぶ早めに大学病院に着いてしまい、お天気もよかったので、外のベンチでひなたぼっこをしてお待ちしました。

そろそろ時間・・・ 受付のベンチで待っていると(赤帽のユニフォームを着ていました)、なにやらどこかでお会いしたことのあるような女性が近づいてきて、「・・・hicechanさんですよね・・・」と・・・ 
まさか奥様もいらっしゃるとは思ってもいなかったので、いきなり緊張はピークになるも、本当に久しぶりにお会いしてうれしい気持ちが勝っていました!
ドクターは車を置きに行っているので、とりあえず精神神経科の医局に行くことになりました。

医局棟 もう10数年ぶり・・・ 毎日出入りしていました・・・ 建物の中の空気 変わらない・・・ 懐かしい。

精神神経科の医局は2階。 
ドクターも奥様も、医局はやはり10数年ぶり・・・ 
知っているドクターがいない・・・ 
浦島太郎状態・・・ 
かろうじて、医局長のドクター 何となく思い出してきました。

ドクターも合流し、しばし世間話が始まりましたが、私はとにかく、当時自分がどんなシステムを組んで、なにをしていたのか が、ほとんど思い浮かばない・・・ お話しはそっちのけで、頭の中はもうぐるぐるめぐり巡っていました・・・ ドクターも一緒!

で、とりあえず「廃棄処分機器」が集められている病院地下の資材管理倉庫へ・・・

まあ、大から小まで、ベッドやら医療機器やらが無造作にほこりをかぶって置かれている。
その中に、見覚えのあるシステム一式が見つかりました。


ドクターの、「こんなデータが取りたい」という要望に応えるべく、当時 ピカピカの新製品だった検査装置を核に、足りない部分はハンドメイド(!)の機材とPC(驚きましたが、PC98でした・・・)で組み上げたシステムの一部が見つかりました。
後は周りを家捜し・・・ 次から次へと、お宝が見つかる・・・

ただ、かなり複雑な配線・・・ 
これを全部ばらして病院に運んで、果たしてシステム再構築ができるのか・・・
・・・と、ドクターが、すばらしい資料をゴミの中から発掘!!!!!

hidechanさん、ほら・・・
・・・ああっ! これ、書いた覚えがあります!  おおっ! 先生見て! ほらっ! 私のdate印が押されている!
本当だぁ! 93年2月だって! 17年前だよ!! 

なんと、当時ドクターの要望を聞きながら何度も打ち合わせをして、最終的にシステム構築をしたときのシステム図と、詳細の配線図が、きれいなままで出てきたのでした。 これは救われました・・・

外来の脳波室にもいらない機材の一部が置かれている ということだったので、外来の合間を縫って、ここからも機材を搬出・・・

結構な物量です。
ひでカーゴ号、かなり満載状態。
積み終わったのは17時前・・・
それからドクターの病院に着いたのが18時過ぎ・・・

休む間もなく、とりあえず機材の搬入と、おおざっぱな設置・・・

今日一日ではとても終わらない・・・
「hidechanさん、明日もできれば付き合ってくれないかなぁ・・・」
「そのつもりでした。 このまま置きっぱなしにはできないです。」
「本当に助かるよ。 じゃあ、明日また朝からお願いするね。」

と、翌日(22日 木曜日)も、朝9時から病院に入り、自分が昔書いたシステム図と配線図を頼りに組み上げました。

この病院、初めて受診したときから今もずっと一緒の外来婦長さん、医事課の方々・・・ 
もう、私も通院が長い方なので、皆顔見知り・・・
でも今回は、「患者」ではなく、お仕事として病院を出入りしているので、自分でもなんだかよくわからない立場・・・
皆顔見知りなので、とても動きやすかったです。

木曜日は外来は休診日・・・ 
なので、ドクターは、病棟を抜け出しては検査室に来て「どう・・・?」と、もう子供のよう・・・
そんなときのドクターの顔は、まさに当時、バリバリに研究していた頃の目つきでした・・・

で、午前中は、脳波室の棚に、使いやすいように機材一式を載せることに専念。
午後から、いよいよ配線接続とノイズチェック(これが一番大切です)、トリガー類がキチッとPCに来ているかのチェック。

で、なんとか組み上がったのがこれです。

ERP計測システム
どれもこれも、今ではカタログやメーカーHPからは遙か昔に消え(涙)、PCもNECの98ですからねぇ・・・
でも、改めて17年ぶりに組み上げ、簡単なチェックをしただけですが、当時のドクターのアイデア、それを複雑怪奇なシステム(笑)として組み上げて、ドクターが要求するデータを取り出すまでの工夫 は、かなりいけてると思いました。
 
当時の私、結構良いお仕事をしていたんだなぁ・・・ と、正直、思いました。

この医療機器メーカー なにが良いか といえば、「ノイズに強い高性能アンプ」につきます。

脳波の電圧レベルは、「数十μV」 さらに、事象関連電位は、「数μV」レベルなので、検査室の環境(シールド)と、ME機器の「アンプ性能」が最重要です。
(ちなみに、心電図は数ミリVなので、脳波に比べたらとても楽です)

事象関連電位は、上記のように背景脳波に埋もれているので、「加算処理」といって、刺激のトリガーを基点として、誘発反応脳波を加算します。
そうすると、ある一定の潜時(刺激から数百ミリセカンド遅れて)に優位に出現する反応波は加算され成長、ランダムに発生している背景脳波やノイズは、加算によって相殺され、反応波が見やすくなります。
とりあえずシステム全体はなんとか組み上がったので、連休明けに「三度目の正直」で、もう一度病院に伺い、私が被験者になって調整をする予定です。

でも・・・
実は、今の世の中、「放射線画像領域の処理アルゴリズム」もどんどん進化し、PCの性能が格段に進歩しているので、膨大な画像データを、ほぼリアルタイムに処理・3D化できる、また、MRI(磁気共鳴検査装置)の性能もグングンとよくなってきている・・・

皆さんも多分、テレビ等でご覧になったことがあると思うのですが、色々な絵やイヤな場面を被験者に見せながら、その時の脳内のどの部位が活性化されているか(赤くなっているか)を、リアルタイムに動画で画像表示する 画像診断が主流になりつつあります。

で、今回移設・組み上げたシステムは、「事象関連電位」といって、あくまでも「脳波」を主体として処理をして結果を導き出す。
 

今は、「事象関連MRI」(ファンクショナルMRI)が 実はすでに主流なのです

もちろんドクターもそのことは重々ご承知で、「今回セットしてもらった昔の機器は、この病院では『研究目的』には使わない。 あくまでも診療手段として、薬効がどうか カウンセリング効果がどうか を、もう少し具体的に、「検査波形」として患者に提示できれば それで十分目的は達成できる。」とおっしゃっていただいています。

それと、「hidechanさんが組んでくれたこのシステムは、当時大学では『ヒット論文メーカーのシステム として、私たちの後も6世代くらいずっと使われてメジャーな学会論文にフルに活用されたんだよ。 本当に良いシステムを組んでくれた・・・」
(これは、先生方がやりたいこと がはっきりしていたから、システムを組みやすかった・・・ 製品が無い部分は自分で回路設計して まだまだ対応できるレベルだった・・・)

でも、17年の時を経て、こうおっしゃっていただけるのは、本当にうれしいことです。

ようやく、私の命を救ってくれたドクターに、多少なりとも、恩返しができたかなぁ・・・ と、思いました。

ところで、「うつ」状態も、この事象関連電位で、優位に反応が出る と本で読んだことがあります。
なので、自分が被験者になるのが、結構楽しみでもあります・・・
結果がご紹介できれば、また記事にさせていただきます。

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のろ

質、量共に深くて、話の半分も分かってないんだと思いますが、17年前の自分の仕事とこんにちはするのは、それも評価してくれてと言うのは、なかなかある事じゃないし、うれしいんだと思えました。(^_^)
PC98かぁ。懐かしいなぁ。
by のろ (2010-04-24 10:00) 

mistta

今晩は。続きを楽しみにお待ちしております。
by mistta (2010-04-24 21:41) 

hidechan

のろさん、ありがとうございます。
ダラダラと長くなってしまって、しかもちょっと内容が濃すぎたこと すみません・・・

今回は、ずっと今まで、私を助けていただいたドクターに、ようやく恩返しができたかなぁ・・・と、いつになく一生懸命にお仕事をしました。 しかも、自分でも思っていた以上に、「楽しく」お仕事ができました。
こんな時は、時間を忘れます・・・
ドクターも、段々昔の記憶がよみがえってきたのか、かなり熱が入ってきているのが、手に取るように感じられました。

この、「事象関連電位検査」というのは、実は「人の心」を測る 「人の心の状態」が、割と客観的にわかる 極めてセンシティブな検査だと思います。

記事にも書かせていただいたように、最近は、fMRI(ファンクショナルMRI)が、事象関連電位検査 に代わって、とても有用なデータを提示しています。
でも、MRIは、何しろ高額な検査機器(数億円)で、付帯設備もかなり大がかりです。
なかなか、普通の病院でも導入のハードルは高い。

そんな中、今回のような「脳波」を使った解析で、ある程度 状態は把握できるので、まだまだ 有用な検査だと、改めて思いました。

自分でも驚いたのが正直なところなのですが、当時、良いお仕事をしていました。
頭が柔軟だったのかなぁ・・・ 

なにが一番困難だったか というと、とにかくNECの98・・・ コマンドはほとんど忘れてしまっていました。
しかも、ドライブレターも、DOS/Vとは違う・・・ どこがHDDで、どこがFDDで、データや計測条件は、いったいどこに格納されているのか・・・ これがさっぱりわからなくて、結局時間切れになってしまいました・・・
by hidechan (2010-04-24 22:09) 

hidechan

misttaさん、ありがとうございます。
続き・・・ これまた、まとめるのが一苦労です・・・(涙)
なんとか、「続編」にまとめるようにガンバリマス・・・
by hidechan (2010-04-24 22:11) 

大将

hidechanさんとドクター(プラス奥様)のやり取りが目に浮かぶようです
やはり1番の財産は人とのつながりですね
本当にそう思える記事です
もちつもたれるなんてぇ言葉がありますが
人の付き合いの根本にはそんな言葉があって
そのうち無償の気持ちが芽生えるのかも知れませんね
by 大将 (2010-04-26 20:22) 

hidechan

大将さん、ありがとうございます。
・・・
>やはり1番の財産は人とのつながりですね
本当にそう思います。
このドクターがいなかったら、ひょっとしたら、今の自分もいなかったのかもしれない・・・
ようやく、私の経験が役に立つ 時が来ました・・・
by hidechan (2010-04-27 01:41) 

TAKA

素晴らしいですね!私も多少なりともADボードからの計測データを
PCにため込んだり、PIOボードで、ステータス信号を送ったり、
光電センサーからの信号で材検し、もののトラッキングなどを
やったことがありますが、hidechan さんは、もっとすごいことを
されてますね。尊敬いたします。

by TAKA (2010-04-27 22:32) 

hidechan

TAKAさん、こんばんは。
・・・TAKAさんも、アナログデータを取り込んでPC処理をするようなお仕事をされているんですね・・・

今回、さすがに98だったのには参りました・・・
今の時代なら、A/Dももっと精度よく高速で取り込めるのでしょうが、これがもたついて、結構イライラします・・・

ただ、当時は、これでも結構まだあまりされていないようなデータ処理だったので、いかにドクターのアイデアが優れていたか というのを、改めて感じました。
生体信号はとても微弱なので、埋もれた反応波をいかに取り出すか・・・ がキーポイントでした。
なので、加算処理(アベレージング)をするしかなかったのです。

by hidechan (2010-04-28 00:06) 

hidechan

たかれろさん、ご訪問&niceありがとうございます。

by hidechan (2010-04-28 18:37) 

hidechan

自己啓発マンさん、ご訪問&niceありがとうございます。
・・・自己啓発マンさんは、ご専門なのですね・・・
お恥ずかしい限りです。
今後とも、よろしくお願いいたします。
by hidechan (2010-05-07 18:40) 

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